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「蕎麦舎で良い」 ~だいこん舎~ vol.1  

北陸道は西鯖江の交差点を100メートル程南下すると、だいこん舎(だいこんや)がある。
否応なく人の目を引くような看板や幟はない。
何の気無しに歩いていたり車で通過したりすると、そこに店があることを認識し損ねるかもしれない。
玄関付近の木造りの看板や営業案内を見て、初めてそこが蕎麦屋だと気付くような店構えだ。

だいこん舎 概観

まあこうして出入り口だけを注視すれば、別にわかり辛くはないのだけど。



入店する。
店内は、それこそ家を改築・改装したものだと言われなくともわかるような造りだ。
しかし家庭的なのではない。
ルーズな生活感はひそやかに、そして丁寧に取り除かれている。

だいこん舎 店内1-1

木製テーブル・椅子の清涼感と暖かみ。
シックな藍染の、近くにして遠くにあるような美しさ。
空間を彩るBGMであるバッハの「無伴奏チェロ組曲」の気品と暖かみ、そして切なさ。
この優しさとはかなさ溢れる時空間は、胸の痛くなるような繊細さと脆さを抱えている。

だいこん舎 店内2

さて。
想定外の事情により、実はこの店には2度訪問している。
1度目は「細挽き十割 細打ち」の「ざる」と「そばがき」、2度目は「手挽き十割 細打ち」の「ざる」と「おろし5種」の「ぶっかけ」の計4種類を頂いている。
また、些細なことだが、「細挽き十割 細打ち」が同語反復のように思えるのは気のせいだろうか。

ともあれ、頂いたものをざっと紹介していく。

・細挽き十割 細打ち

製粉屋に製粉を委託されている蕎麦。

だいこん舎 細挽き2-1
(どうしようもない程にブレました…)

口に含む。
適度な軽さと適度な温度、適度な角の立ち方に適度な長さと、実に「適度」づくし。
これだけの「適度」が重なると、もはや適切な食感となる。

その中で他の「適度」を少しだけリードするのが穀物感。
それ自体は濃くないはずだが、他の「適度」達に引き立てられているとでもいおうか。
だから、心地の良い濃さなのである。

ともあれ、実に完成度が高い蕎麦である。
自家製粉・手打ちの蕎麦がそのクォリティーを保障するわけではないこと。
常々知っているつもりであったが、それでもこの蕎麦が自家製粉ではないと知ってから内心少しハードルを下げていた自分を恥じた。

・手挽き十割 細打ち

自家製粉で手打ちの蕎麦。

だいこん舎 手挽き細打ち

短くなっていたり切り揃えも均質的ではなかったり。
「細挽き」に比すと、さすがにハンドメイド感があるというわけだ。
おそらく、ある程度は意図的にそうされているのだろう。

だいこん舎 手挽き細打ち2

グレー色だったり黒殻の含有量の違いからも、実食するまでもなく「細挽き」よりも穀物感が濃いであろうことがわかる。
しかし、あれ?
いざ実食してみると、予想外にも穀物感自体は「細挽き」の方が感じやすいことに気付かされる。
これは不思議な感覚。
穀物感の濃さ自体は「手挽き」の方が勝るとわかるのに、穀物感を感受しやすいのは「細挽き」。
一体、どういうことだろう。
しかももっとわからないのは、別途注文した塩をかけて両方の蕎麦の穀物感を比すと、今度は「手挽き」の穀物感の方が感受しやすくなることだ。
…わからん。


ともかく双方の蕎麦の水準の高さに少し驚かされ、やはり本場は違うものだと納得させられる。
でもこの蕎麦屋で私が気に入ったのは、蕎麦だけではない。
蕎麦つゆも負けず劣らず、素晴らしいものである。
それは甘いと辛いの中間領域にあるスッキリとした口当たりのもので、出汁の旨みも味わいやすいもの。
蕎麦をつけて頂くと、まずは蕎麦と蕎麦つゆの合わせ味が美味しく、噛めば噛むほど増していく蕎麦の風味も素晴らしい。

・そばがき

温度や舌触りが里芋に似た食感の蕎麦掻。

だいこん舎 そばがき

細かく挽かれた蕎麦粉で作られている。
そもそも微粉系の蕎麦掻をあまり好まないため、私がこれをどう感じるかなどあまり参考にならないかもしれない。

・ぶっかけ

大根おろしが蕎麦に文字通りぶっかけられた蕎麦。
ネギと削りたての鰹節があしらわれている。
福井の定番蕎麦である。

だいこん舎 ぶっかけ

何を隠そう、私はこのぶっかけが苦手。
それは私が蕎麦そのものの味わいを最重要視するタイプであり、大根の辛みで蕎麦の繊細な風味が消されるような気がするからである。
とはいえ、ぶっかけ自体を否定しているわけではない。
どんな料理であれ、それが生まれてあまねく定着するに至ったものであれば、一片の美味しさもない(=不味い)ものであるはずがないのだから。
そういう意味では、私はこのぶっかけを美味しいと思っている人たちに遅れをとっている。
ぶっかけを食して美味いといっている人を見ると、身をよじるような羨望に駆られる。

「苦手を克服し、『美味しい』を増やす!」。
そんな飽くなき欲望に基づいて注文した、このぶっかけ。
いざ!実食!!

…完敗である。
まだ無理です。

しかしこの蕎麦を食す前、ご主人が厨房で一生懸命に鰹節を削っているのが見えた。
あれには、心打たれるものがある。
ありがとう。




だいこん舎という名は、福井がおろし蕎麦の発祥地・本場であることにちなんでいない。
いや。もしかすると本当はそれも意識されているのかもしれないが、どうやら少なくともそれが第一義ではなさそうだ。
大根のようにしっかりとこの地域に根ざし、そこから様々なものをフィードしたい。
そんな思いを店名に込めたのだと、ご主人はある場所で語られている。

しかし、月並みになってしまうかもしれないが、仮にこの蕎麦屋が「蕎麦舎」という名であったとしても、十二分に納得できる。
それだけクォリティーの高い蕎麦が供される。
舌鼓を打てる。
あの、しっとりと大人びた時間の中で。

(訪問時、2009年9月)


○ だいこん舎

住所:福井県鯖江市桜町2-5-10(地図
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜日、第3日曜日
電話番号:0778-52-3520
備考:禁煙

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COMMENT

あれっ?
店名の『だいこん舎』というのに、なんとなく聞き覚えが・・・
そして、3枚目の写真で「やっぱり、見覚えがあるかも?」と思って確認してみたら「やっぱり♪」という感じでした。 >_<
でも、2枚目の写真を見た時には「面白い構図だなぁ!」という印象だったんですけど、コチラも以前に私は見ていたんですね。 ^^:
大きさの違いで印象が違ったのでしょうか?
お蕎麦やそばがきはモチロンなんですけど、つい「一輪挿し」の横にある「コロン♪」としたモノとかに目がいってしまいます。 >_<
2010/04/06(火) 15:38:50 | URL | こま #JK/.nkhc [Edit]
こまさん こんばんは

>大きさの違いで印象が違ったのでしょうか?

微妙に文章も変えている箇所がありますが、何より写真の位置がアレとは異なるのが大きいでしょうね。

>お蕎麦やそばがきはモチロンなんですけど、つい「一輪挿し」の横にある「コロン♪」としたモノとかに目がいってしまいます。 >_<

ははは。
前にこまさんがそう言われて以降、一応ああいうのも撮るように努めています。
「あっ、そうだったそうだった」って感じで思い出しつつ。

そして、こまさんが3枚目の写真=「コロン♪」に見覚えがあったと聞き、お店にとってああいうのは大事なのだなと改めて感じさせられます。
私ならば、蕎麦か文章でしか「前にもこのレビューを見たかも」とは思い出せませんから。
患者の顔と名前は一致しないけど、カルテと名前は一致する医者のような味気の無さです。
まだまだトホホですね。
2010/04/07(水) 00:02:43 | URL | 京瑠璃 #3KrfhFaQ [Edit]

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蕎麦、中華そば、側(そば。つまり私たちの身近にあるもの)等、ソバ全般に関して。

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