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美味しさの不可分性 ~そば切り 山親爺~ vol.1 

阪急神戸線は春日野道駅で下車。
駅を出て眼前に現れる一帯は、いやに覇気が無く錆びれている。
三宮駅から数キロ程度しか離れていないはずだが何とも…。

その一帯を西に抜け、途中で北へと進路を変える。
ここで上り坂となるのが、いかにも神戸らしい。

途中で、女性御用達の洒落た雑貨屋のような店に目を留める。
ガラス張りのドアと木製のフレーム、クリーム色の外壁。
神戸のみならず、西宮や宝塚辺りでもよく見かけるような佇まいだ。
でもここは雑貨屋じゃない。
そば切り 山親爺とある。



入店する。

山親爺 店内

外壁と同様、内壁もまたクリーム色。
その中で映えるのは、いかにも蕎麦屋らしい木製テーブルやハンドメイド感が暖かい木製のイス、程ほどにくすんだ木製の床、耳を澄ませばチクタクと音が聞こえそうな古時計。
それらが全て軽やかかつ涼やか。それでいて暖かい。

山親爺 店内3

こういう店、好きなんだよな。
ここでは誰もが無理なく、そして等しく穏やかに過ごせる。
そんな情景が目に浮かぶようだ。
窓の外の凡庸な景色でさえ、清清しくて美しい借景に見えてくる。

花番の女性はご主人の奥様。
クールに話されるが、要領を得た説明の仕方やツボを得た働き振りが良い。
肝も大きそうで、この店への貢献度は「花番」という役割以上のものがあるに違いないと想像させる。

時折厨房から顔を覗かせるのは、この店のご主人。
まだ「親爺」というには若い年齢であると推察させる。
「若旦那さん」と呼びたくなる程だ。
その相貌は割合に男くさいが、それ以上に暖かくて柔和な印象を抱かせる。
とても好感の持てる夫妻だ。

また、この2人に抱かされた好印象は、店の内・外装に抱いた印象とほぼ同じであることに気付かされる。
ふむ。
よく出来たものだ。

さて。そろそろ食したものの話に移ろう。

・すじにくの煮込み

牛スジが煮込まれたもの。
スジ肉の他には大根とこんにゃく、ネギが入っている。

山親爺 すじにくの煮込み

甘めに煮込まれたものと思いきや意外にもぴりりと辛く、そして熱々。
酒のアテに良さそうだ。
なお、後に蕎麦をこのタレにつけて食してみたが、あまり合わなかった。
まあそもそも蕎麦と共に食すために作られたものではないのだろう。
そう。
スジ違いというものだ(失敬)。

・もり(細いそば)

薄緑がかっていて、赤と黒の星が拝める細めの外一(十一)蕎麦。
短い部位が混ざっているのは、粗めに挽かれているから。

山親爺 もり(細いそば)

啜り上げ、噛むと同時に口の中で転がしてみる。
縮々とした軽い食感。
これが心地良い。
そしてやや淡い目ながらも、確かな甘みと香りのバランスにも優れている。
別途注文した塩との相性も良く、甘みも香りも引き立てられる。
良い蕎麦切りだ。

山親爺 もり(細いそば)2

・もり(手挽き)

グレーがかった、玄の手挽き蕎麦。
やや粗めに挽かれていて、細かったり短かったりする箇所もある。
しかしそれでも、比較的繋がりは弱い方ではない。
角はさほど立っていないが、問題は無い程度だ。

山親爺 もり(手挽きそば)

立ち上る穀物的な香りを少し堪能した後、口に運ぶ。
潤いと張りのある食感。
ご主人の修行先であるそば切り 蔦屋の「手挽き」を想起させる。
と、同時に濃厚な穀物感が幅を利かせてくる。
塩を少しかければ、それも倍増する。

しかし、一つだけ些細なことが気になる。
「挽き込まれた殻がやや多過ぎないか」
穀物感が強いのは嬉しいが、それを下支えする甘みがあと半歩足りないように感じるのである。
殻は実の甘みを薄めるマイナス点があるそうだが、この蕎麦切り中の多めの殻は、実の甘みを弱め過ぎているのだろうか。

山親爺 もり(手挽きそば)-1

同じ挽き方で同じ配合でも、もっと甘みが強い産地の蕎麦の実を選ぶのか。
単に殻を減らすのか。
やはり挽き方を変えるのか。
素人の私にはわからないが、とにかく何らかのカタチでもう少しだけベースとなる甘みを強めて欲しいとも感じる。
わがままだねぇ。

まあ好みの問題だといわれれば、そうだとも認められる。
私の望む味わいのものだとインパクトが減るのかもしれない。
そもそもこの蕎麦の穀物感も強さはインパクトが十分であり、その他諸々美味しい蕎麦切りとして成立している。
上で「些細なこと」と述べたのもそのためだ。


そばつゆは一口目で甘めのものかと思わされたが、それは最初だけ。
すぐ後から醤油や節系、昆布の旨味の方が強めに利いてくるのを感受(濃いわけではない)。
関東の人からすればどうかわからないが、私は甘めではないと感じた。

これを蕎麦につけて頂く。
つゆが持つ多様な味わいの後、それぞれの蕎麦が持つメリットが立ち上がってくる。
「一粒で二度」どころか、もっと美味しい。

こういう一口間の味わいの変遷もまた、蕎麦を頂く醍醐味の一つなんだな。

今までに色んな蕎麦屋で何度も経験したことを、ここでも再認識させられる。
店内の涼しくも暖かい空気感に浸りつつ、その醍醐味を噛み締められる。




店の雰囲気、従業員の人柄、食べ物の美味しさ。
これらは時に分断し難くなる。
雰囲気が良いから、人柄も食べ物もより良く思えるのか。
食べ物が良いから、人柄も雰囲気もより良く思えるのか。
人柄が良いから、食べ物も雰囲気も良く思えるのか。
わからなくなることがある。
きっと不可分なのだろう。

一つだけは確実なのは、こうしてわからなくしてくれる店は、紛れもなく素晴らしい店だということだ。
美味しい店とでもいおうか。

そば切り 山親爺は、今後多くの方々の「美味しい店」リストに載るに違いない。
いや。
既に載っているはずだ。

(訪問時、2009年11月)

山親爺 お品書き

○ そば切り 山親爺

住所:兵庫県神戸市中央区熊内町2-1-37
営業時間:月曜11:30~14:30 水~日曜日11:30~14:30 17:30~20:30
定休日:月曜夜、火曜、第3月曜
電話番号:078-222-9299
駐車場:無し
備考:(確か)禁煙



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蕎麦、中華そば、側(そば。つまり私たちの身近にあるもの)等、ソバ全般に関して。

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